マーケティング担当者や営業担当者は、「誰に対して何を的確にアプローチするべきか?」という問いを常に持っているのではないでしょうか。
特にBtoBマーケティングや営業においては、どの「意思決定者」にアプローチするかによって商談が成功するかどうかが大きく左右されます。
この意思決定者の集まりを「DMU(Decision Making Unit)」と呼び、BtoBビジネスにおける成功には欠かせない要素です。
この記事では、DMUとは何か、なぜDMUを把握しておく必要があるのか、そしてDMUに対する効果的なコンテンツ戦略について詳しく解説します。
目次
DMUとは?
「DMU(Decision Making Unit)」は、企業や組織において何らかの意思決定を行う際に関与する人々のグループ、もしくは意思決定に影響を与える人物のことを指します。
BtoBビジネスの購買プロセスにおいては、一般的にひとりの人物が全ての意思決定を行うことは少なく、複数の部門や役職にわたる関係者が関与します。これらの意思決定に関与する人々を特定し、適切なアプローチを取ることが、リード獲得率や成約率を上げるために重要となります。
DMUタイプ
DMUには様々な役割を持つメンバーが含まれ、以下のようなタイプに分けられます。
- 使用者(ユーザー)
実際に製品やサービスを利用する人のことです。BtoBビジネスでは使用者と購買者が異なることが多いため注意が必要です。 - 起案者(イニシエーター)
起案者とは、企業課題や使用者からの課題や要望をもとに、改善のために製品選定や実現可能な提案を行う人や部署のことです。使用者と異なる点は、製品やサービスの利点と検討課題を多角的に評価し、承認を得るための現実的な提案を行うことです。
- 影響者(インフルエンサー)
社内で技術的な知識や専門的な立場から、意思決定に影響を与える人々を指します。実際の購買プロセスに直接は関与せず、決裁者に対して説得力を持つ役割です。 - 購買者(バイヤー)
企業内で購買を担当する人や部署を指します。購入する製品やサービスの価格や契約条件について交渉を行う役割を持ちます。 - チェッカー(ゲートキーパー)
契約条件や予算などの、最終的な決定に必要な情報を確認して決定者に推奨事項を提示する役割の人を指し、チェッカーもしくはゲートキーパーと呼ばれます。 - 決定者(ディサイダー)
最終的に購入を承認する権限を持つ人物です。一般的には部長や役員、代表取締役などが決定者となります。
これらの役割をしっかりと理解し、それぞれのDMUタイプに対して適切なアプローチを取ることで、マーケティングや営業活動を効率的に進めることができます。
なぜDMUを把握しておく必要があるのか?
DMUを把握することは、BtoBマーケティングや営業において特に重要とされますがそれはなぜでしょうか。ここからはDMUの把握が重要な理由について解説します。
意思決定プロセスを最適化できる
BtoBビジネスにおける意思決定プロセスでは、一般的にDMUが複数となりBtoCよりも複雑で時間がかかります。
DMUを把握し、それぞれの役割や影響力を理解することで、意思決定のプロセスを円滑に進めることができます。
適切なタイミングで適切な人にアプローチすることができれば、マーケティングや営業サイクルを短縮し、効果的にリソースを使うことが可能です。
DMUの各タイプによってニーズが異なるため
DMUの各タイプには、それぞれ異なるニーズや関心が存在します。
例えば、技術担当者は商品の機能や技術的な優位性に興味を持ちますが、経営層はコスト削減やROIに焦点を当てる傾向があります。
DMUを把握してそれぞれの役割に合ったパーソナライズされたメッセージを届けることで、リード獲得や商談をより効果的に進めることができます。
信頼関係を築きやすくなる
意思決定に関与する全てのメンバーと信頼関係を築くことで、商談がスムーズに進みやすくなります。
単に決定者だけにアプローチするのではなく、使用者や影響者とも良好な関係を築くことは、提案の採用にも大きく貢献します。
さらに各メンバーの期待に応えるコンテンツや提案を行うことで、他社との競争優位性を得ることも期待できます。
DMUに対する効果的なコンテンツ戦略
DMUに対して効果的にアプローチするためには、それぞれの役割やニーズに合わせたコンテンツを提供することが重要です。
ここからは、具体的なコンテンツ戦略の例を解説します。
使用者向けコンテンツ
使用者は、実際に製品やサービスを使うことになるため、その操作性や機能性、実用性に強い関心を持っています。デモ動画や使用事例、操作マニュアルなど、実際の使用シーンをイメージできるコンテンツを提供することが効果的でしょう。
例:
- 製品デモや実際の使用方法を紹介する動画
- ユーザーの声を集めたケーススタディ
- 操作ガイドやFAQページ
影響者向けコンテンツ
影響者は、技術的な知識や専門的な立場から意思決定に関与するため、製品やサービスの技術的な側面や専門的な情報を重視します。ホワイトペーパーや技術仕様書、競合製品との比較表など、データに基づいたコンテンツを提供することで、影響者の信頼を得ることができます。
例:
- 技術仕様書や製品の技術的な優位性を示す資料
- 競合製品との機能比較表
- 技術的な詳細情報やトレンド、調査内容が含まれたホワイトペーパー
購買者向けコンテンツ
購買担当者は、コストや契約条件、納期など、価格や取引条件に焦点を当てて判断します。価格シミュレーションツールやROI計算ツール、割引キャンペーン情報など、コストパフォーマンスをアピールするコンテンツが有効です。
例:
- ROI(投資対効果)を試算できるシミュレーションツール
- 割引キャンペーンや特別オファーの案内
- 購買プロセスや契約条件の詳細
チェッカー向けコンテンツ
チェッカーは、DMUの中でも重要な情報のフィルタリング役となります。営業が適切なタイミングでアプローチできるよう、チェッカーに対しても信頼を築くことが重要です。チェッカー向けには、簡潔かつわかりやすい資料や、的確な質問に対応できるFAQが有効です。
例:
- 簡潔で理解しやすい製品概要資料
- 質問に迅速に答えるためのFAQやヘルプデスク情報
決定者向けコンテンツ
最終的に購入を決定する人物は、企業全体にとってのメリットやリスクを最も重視します。事業への影響や市場シェア拡大の可能性、競合他社との差別化を強調するコンテンツを提供することが効果的です。
例:
- ビジネス全体に対する影響を示す成功事例
- 他社との競合優位性を強調した提案書
- 企業成長や市場シェア拡大の可能性を示すデータ
DMUマップの作成
DMUを把握し、各メンバーに適切なアプローチを行うためには、「DMUマップ」の作成も有効です。
DMUマップとは
DMUマップとは、商談における意思決定プロセスを可視化したものです。
- 誰が意思決定に関与しているのか?
- その人のDMUタイプは何か?
- それぞれの関係性はどのようなものか?
これらを可視化して整理することでそれぞれのニーズに合った最適なアプローチをすることが可能となります。
さらに、意思決定者だけでなく関係性の高い部署なども記載しておくことでより意思決定構造を掴みやすくなります。
まとめ
BtoBマーケティングや営業においてDMU(意思決定ユニット)を理解し、各メンバーにパーソナライズされた適切なアプローチを行うことは、BtoBビジネスの成功を左右する重要な要素です。
DMUの構成を正確に把握し、それぞれの役割や関心に基づいたコンテンツを提供することで、リード獲得や商談の進行がスムーズになり、最終的な成約に繋がります。効果的なコンテンツ戦略を実施し、DMU全体と信頼関係を築くことで、競争の激しいBtoB市場においても成功を収めることができるでしょう。
DMUを把握し、ターゲットに合った戦略的なアプローチを行うことが、ビジネス成果の向上に繋がります。ぜひ、このポイントを抑えたマーケティング・営業戦略を実践し、成果を最大化していきましょう。