BtoB営業の新潮流!POV(Point of View)で本質的な課題解決を実現する方法とは?

昨今のBtoB営業においては、テクノロジーの進化や情報過多、顧客の意思決定プロセスの多様化に伴い、従来の営業手法だけでは成果が得にくくなってきています。

特に、複雑な企業間取引の場面では「自社の製品・サービスを一方的にアピールするだけ」では顧客の課題を十分に解決できず、その結果、商談が停滞したり競合に負けてしまうケースが増えているのです。

こうした状況を打破する手段として、近年注目を集めているのが「POV(Point of View)」というアプローチです。

本記事では、POVとは何なのか、また他の営業手法とどのような違いがあるのか、さらに具体的な活用ケースや導入によるメリットについて詳しく解説いたします。

BtoB営業の昨今の課題

BtoB営業の現場では、デジタル化の進行や意思決定者の増加により、商談をまとめるハードルが高まっています。以下、昨今の代表的な課題をいくつか挙げてみましょう。

1)情報過多による差別化の難しさ

インターネットやSNSを通じて情報が大量に流通する時代、顧客企業は常に多くの製品・サービスを比較検討しています。

その結果、自社の製品を「どう差別化して提示するか」が営業担当にとって大きなチャレンジとなっています。製品の優位性や特徴を示しても、競合企業が同様の主張をしているケースは珍しくありません。

2)意思決定プロセスの複雑化

BtoB営業の場合、購買意思決定に関与するステークホルダーが複数存在することが多いです。経営層や現場担当者、場合によってはIT部門や法務部門など、様々な部門が関わることで意思決定が複雑化し、商談期間も長期化しがちです。

加えて、商談が長引くほど他社との競合状況が変化しやすく、優位性を保つのが難しくなることも課題の一つです。

3)リレーションシップの希薄化

近年はオンラインミーティングツールの普及やリモートワークの増加により、対面での商談機会が減少しています。商談がオンライン中心になったことで、相手の表情や空気感など、生のコミュニケーションで得られる情報量が少なくなり、顧客とのリレーションシップを構築しづらくなっているという声もあります。

これにより、純粋な営業力だけでなく、ウェブ会議の場でより効果的な情報発信をするスキルや、顧客が抱える潜在的な課題をリモートで引き出す力が求められています。

4)数値目標・KPIに偏りすぎた営業活動

企業の営業部門では、数字に基づいたマネジメントが行われるのは当然のことですが、目標達成を急ぐあまり顧客の要望に向き合う姿勢が希薄になりがちです。

自社の売上目標を優先するあまり、顧客企業の課題を深く掘り下げず「単なる売り込み」に終始すると、長期的に見ると関係性が破綻するリスクがあります。

 

このように、BtoB営業には様々な課題が存在しますが、これらを解決する一つのアプローチとして、「POV(Point of View)」が近年注目を集めています。

課題を解決するPOV(Point of View)とは?

POV(Point of View)とは、営業担当者が「顧客企業が抱える本質的な課題に対して明確な視点や洞察を提示し、解決へと導くための提案」を指す概念です。

日本語では「視点」「観点」「洞察」と訳されますが、単なる情報提供や製品紹介ではなく、「顧客の置かれている状況に対して営業側が独自の知見や仮説を立て、それに基づいた提案を行う」という一歩踏み込んだ営業手法として知られています。

POVは単なる技術的な機能や価格面でのアピールではなく、顧客が気づいていない問題の本質を捉えることに重点が置かれます。

例えば、顧客企業の業務プロセスを分析し、「貴社の課題は単に管理システムの老朽化ではなく、意思決定フローが属人的であることに起因しています」というように課題を再定義した上で、「では新たな意思決定プロセスを可視化するソリューションを導入しましょう」という形で解決策を提示するわけです。

顧客の視点に立ちつつも、営業担当者としての独自の意見や洞察を加味することがPOVの核となります。あくまで顧客の目線を尊重しながらも「自分たちはこう考える」という独自性を打ち出すことで、数ある選択肢の中から自社を選んでもらえる可能性が高まるのです。

従来の営業アプローチとの違い

従来のBtoB営業手法としては、以下のようなものが挙げられますが、POVとの違いはどのようなものでしょうか?

1)ソリューション営業との違い

顧客の課題をヒアリングし、それにマッチする製品・サービスを提案する手法です。顧客の要望に合わせた解決策を示す点は、POVとも共通しています。

ただし、多くの場合は顧客側が把握している課題を前提に提案が行われるため、顧客が認識していない潜在的課題や、ビジネス上の大きな変革を促すような踏み込んだ提案は行いにくい傾向があります。

2)コンサルティング営業との違い

こちらは顧客の課題を深掘りし、顧客企業の経営戦略や業務フローにまで踏み込みながら、最適な解決策を提示する営業手法です。

POVと共通する点も多いのですが、コンサルティング営業は比較的長期間にわたり顧客企業の内部事情を分析しながら進める印象が強いです。一方、POVはコンサル的な要素も取り入れつつ、営業担当者自身が「自社が提供できる価値」を独自の視点から提案し、顧客が抱える問題の輪郭を鮮明にするという点で異なります。

3)ハンティング型・リードジェネレーションとの違い

リストアップされた見込み顧客に対して、テレアポやメール送信、Web広告などでアプローチし、商談につなげる営業手法です。

リードを獲得することに主眼が置かれがちで、短期的に成果を出すには効果的な一方、顧客の課題を深く理解するところまでは踏み込まず、単なる接触機会の増加に留まることも少なくありません。

以上のように、POVは「顧客が抱える真の課題と向き合い、自社としての見解や解決策をぶつける」という点でソリューション営業やコンサルティング営業と似ていますが、より短期間で本質を突く提案を行うアプローチと言えます。

ポイントは、営業担当者が「顧客の課題に対して、自社としてどう考え、どう導くか」という独自の“視点”を提示することです。

POVの具体的な活用ケース

POV(Point of View)はどのような場面で活用できるのでしょうか。ここでは、具体的な事例やケースをいくつか挙げます。

ケース1:新規顧客へのアプローチ時

新規顧客へのアプローチでは、まずは相手に自社の存在を知ってもらい、興味を持ってもらうことが最初のハードルです。

ここで単に「御社の課題を解決します」「優れたソリューションです」という一般的な営業文句を並べるだけでは、他社との差別化は難しいでしょう。

その代わり、顧客企業の業界動向や市場調査を事前に行い、「この業界は今後、〇〇の規制や〇〇の技術革新によって大きな変化が予想される。その際、御社の強みである△△を活かすためには××が重要だと考える」というように、独自の見解を示します。

こうすることで「この営業担当者は自社のことを理解しようとしている」という好印象を与え、商談の入り口をスムーズにすることができるのです。

ケース2:商談が停滞した際の打開策

商談が長引いている場合は、顧客企業内で意見がまとまらない、あるいは導入効果がイメージしづらいといった原因が考えられます。

そこで、「顧客企業の課題そのものを再定義」し、別の観点から解決方法を提案するPOVが有効です。

たとえば「システム導入によるコスト削減」を最初の軸としていたところ、「実は組織マネジメントの刷新が真のボトルネックではないか?」といった洞察(インサイト)を提示し、顧客企業の経営層や他部門にも再検討を促します。

これにより「そもそも解決すべき問題は何なのか?」という視点に引き戻し、停滞している案件を動かす可能性があります。

ケース3:既存顧客へのアップセル・クロスセル

POVは既存顧客への追加提案にも有効です。日頃のやり取りの中で顧客の業務や今後の方針を把握し、「実は新たなソリューションAを導入することで、これまでのプロセスBが大幅に短縮できる可能性があります」「すでに導入済みのシステムCと組み合わせると、さらに生産性が高まると考えられます」という形でPOVを提示するのです。

既存顧客は自社の製品・サービスをある程度理解しているため、そうした既存の活用実績を踏まえながら新たな提案を行うことで、納得感のあるクロスセルやアップセルが期待できます。

POV導入による企業のメリット

POV(Point of View)をBtoB営業で活用することで、営業担当者や企業として以下のようなメリットを享受できます。

1)差別化が容易になる

競合他社が提供するソリューションと機能や価格が近い場合でも、顧客の課題の捉え方や提示する解決策の切り口がユニークであれば、「この企業はしっかりと自社のビジネスを理解してくれる」「他社にはない視点でアドバイスをくれる」と評価されます。

結果として、価格競争に巻き込まれずに受注を獲得することができる可能性が高まるのです。

2)深い信頼関係の構築

顧客企業のビジネスモデルや内部事情を深く理解し、そこから導き出される独自のPOVを提示するためには、継続的なコミュニケーションが不可欠です。

そのプロセスを通じて顧客との対話が増え、営業担当者がパートナー的なポジションを得やすくなります。

結果的に「この担当者は自社を成功に導くために本気で取り組んでくれている」との信頼感が醸成され、長期的な取引へとつながる可能性が高まります。

3)顧客の潜在ニーズを掘り起こせる

POVの核心は「顧客がまだ気づいていない課題を発見し、明確にする」ことです。

顧客企業の視点だけでは見えないボトルネックを洗い出せれば、それを解決するための新たな商材やサービスを提案するチャンスが生まれます。

これにより、受注の幅が広がるだけでなく、既存の案件でも追加の予算を確保してもらいやすくなるメリットがあります。

4)営業組織全体のスキル向上

POVを取り入れるには、業界知識や問題解決能力、仮説構築力などが求められます。

これらのスキルは一朝一夕で身につくものではありませんが、POVの実践を組織的に推進することで、営業担当者全体のレベルアップにつながります。

営業部内でナレッジを共有し合う文化が育まれれば、新人でも先輩のPOV事例を参考にして自分なりの視点を持つようになり、組織としての営業力が底上げされるのです。

まとめ

BtoB営業では、テクノロジーの進化や市場競合の激化に伴い、従来の営業手法だけでは成果を出しづらくなっています。

こうした状況の中、POV(Point of View)というアプローチが注目されています。POVは顧客の課題を掘り下げ、自社としての独自の視点や洞察を提示することで、顧客の意思決定を後押しし、商談をスムーズに進めるための強力な武器となるのです。

  • BtoB営業の課題としては、情報過多による差別化の難しさ、複数ステークホルダーによる意思決定の複雑化、リレーションシップの希薄化、KPI至上主義による顧客志向の低下などが挙げられます。

  • POVは、顧客が気づいていない課題を再定義し、自社の強みやビジョンに基づいた解決策を提案することで、商談を一歩先へ進める営業手法です。

  • 他の営業アプローチ(ソリューション営業やコンサルティング営業)に比べて、短期間でより本質的な提案を行う点で特徴があります。

  • 具体的には、新規顧客へのアプローチや商談停滞時の打開策、既存顧客へのアップセルなど、幅広いシチュエーションで活用が可能です。

  • POVを導入することで、差別化が容易になり、顧客との深い信頼関係を構築し、潜在ニーズを掘り起こしやすくなるだけでなく、営業組織全体のスキル向上にも寄与します。

自社の営業活動が単なる価格や機能の提案に留まっている、あるいは顧客の課題を真に理解できていないと感じる場合は、POVを取り入れることで新たな視点が得られるかもしれません。

Point of Viewを明確に持ち、顧客のビジネスに深く入り込んだ提案を行うことで、営業担当者としての存在価値が一段と高まり、結果的には受注率の向上や契約額の増加、長期的なリレーションシップの確立といった効果が期待できるでしょう。

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アクセサイト編集担当

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