近年、BtoB企業がマーケティング・営業・カスタマーサクセス部門を一体化させ、収益成長を最大化するための戦略として注目を集めているのが「RevOps(Revenue Operations)」です。
従来は各部門がそれぞれ個別に施策やデータ分析を行っていたため、施策同士が連動しづらく、経営視点での一貫したKPIマネジメントが難しいという課題がありました。RevOpsは、このような部門間の連携不足を解消し、部門横断的な収益成長を目指す新しいアプローチです。
RevOps推進のためには、各部門のデータを統合管理し、業務プロセスの可視化や分析を効率的に行える「統一されたプラットフォームの利用」が欠かせません。
そこで多くの企業が注目しているのが「HubSpot」です。HubSpotはマーケティングオートメーション機能だけでなく、CRM、営業支援、カスタマーサクセス管理など、BtoB企業の収益に直結する部門が必要とする機能を一元管理できるため、RevOps導入に最適化されたプラットフォームとして広く活用されています。(2025年3月現在、全世界で24万社以上が利用)
本記事では、HubSpotの中でも特にKPI測定で大きな役割を果たす「レポートライブラリー」にフォーカスし、具体的なマーケティング・営業・カスタマーサクセス部門のKPI事例と、実際にどのようなレポートを活用すれば業務横断的なPDCAを回しやすくなるのかを解説します。
※本記事で紹介しているレポートやダッシュボードなどの各種機能は、契約するライセンスによって利用可否が異なりますので、詳細はHubSpot社の料金ページにてご確認をお願いします。
目次
RevOps導入に最適化されたHubSpotとは?
RevOps導入の要となるのは、収益や顧客データ(CRM)を部門間で包括的に把握し、マーケティング・営業・カスタマーサクセスの各部門のアクションが企業の収益にどのような影響を与えているかを可視化することです。
HubSpotはもともとWebコンテンツ管理(CMS)やマーケティングオートメーション(MA)ツールとして知られていますが、近年では「Sales Hub」「Service Hub」「Operations Hub」などのモジュールが充実し、CRMデータを軸に部門横断で顧客接点を管理できるプラットフォームへと進化しており、昨今では業務をアシスタントする「AI機能」も拡充されました。
例えば、従来はマーケティングで獲得したリード情報を営業部門に渡す段階で情報の抜け漏れがあったり、商談後の継続フォローがカスタマーサクセスに引き継がれる際にナレッジが途切れたりする問題が起きがちでした。
しかしHubSpotを導入することで、一連の顧客データを単一のデータベース上で一括管理し、部門間のやりとりをシームレスに行うことが可能になります。
さらに、HubSpotは「カスタムプロパティ」と呼ばれるCRMデータのカスタム項目や営業パイプラインを柔軟に設定でき、企業独自の営業プロセスやサービスフローに合わせて運用をカスタマイズしやすいのが強みです。
こうしたHubSpotの高い拡張性と部門統合機能が、RevOps導入をスムーズにし、施策効果を収益へ直結させるうえで非常に重要な役割を果たします。
RevOps導入を成功させるマーケティング、営業、カスタマーサクセス部門のKPI設定例
RevOps導入の成否は、各部門の連携だけでなく、「正しいKPIを設定し、モニタリングと改善を継続する」ことにも大きく左右されます。ここでは、代表的なKPI例を部門別に示します。
マーケティング部門のKPI例
- リード獲得数:新規リード、ウェブサイトからの問い合わせ数、セミナー参加者数など
- リードクオリティ指標:MQL(Marketing Qualified Lead)の数、SQL(Sales Qualified Lead)への転換率
- ウェブサイトCVR(コンバージョン率):フォーム送信率や資料ダウンロード率
- マーケティング施策別ROI:広告費やキャンペーン投資に対するリード獲得・売上成果
営業部門のKPI例
- 商談数:見込み顧客と実際に商談が行われた件数
- 受注率:商談から受注に至った割合
- 平均商談期間:リードから受注に至るまでの期間
- 顧客単価:受注金額の平均
カスタマーサクセス部門のKPI例
- 解約率(チャーンレート):契約更新が行われなかった割合
- 顧客満足度(NPSなど):カスタマーサーベイによる推奨度や満足度評価
- クロスセル・アップセル率:既存顧客への追加契約や上位プランへのアップグレード率
- 初期導入成功率:契約直後のオンボーディング成功件数や期間
これらのKPIを単に部門内で管理するだけでなく、総合的に捉えて全体の収益にどう寄与しているかを可視化するのがRevOpsの基本的な考え方です。
たとえば、マーケティング部門が質の高いリードを多く獲得しても、営業部門での受注率が低ければ成果は伸び悩みます。また、受注後にカスタマーサクセスが継続利用や追加契約を獲得できなければLTV(顧客生涯価値)は高まらず、長期的な収益拡大にはつながりません。
したがって、部門をまたぐ形でデータを「ひとつなぎ」にし、共通の指標をもとにKPIを分析することが不可欠となります。
KPI測定に有効なHubSpotのレポートライブラリーとは?
HubSpotにおけるレポート機能の中でも、標準で用意されたレポートテンプレートやダッシュボード集をまとめて利用できるのが「レポートライブラリー」です。
※HubSpotのレポートライブラリーのナレッジページはこちら
これは、HubSpotが蓄積してきた膨大なデータベースやユーザー事例に基づき、よく使われる指標やダッシュボード設計をあらかじめ標準化しているため、導入直後から簡単に指標管理を始められるのが大きな魅力です。(2025年3月現在、19件のダッシュボードテンプレートと219件のレポートテンプレートが存在しています。)
また、最近では、これらのレポートの中から、「アナリティクススイート」として、マーケティング、営業、カスタマーサービスの部門別や目的別にベストプラクティス型のレポートテンプレートが提供されていますので、まずはここから活用してみると良いでしょう。
<アナリティクススイート画面のイメージ>
RevOpsを実践する上では、各部門のKPIモニタリングだけでなく、部門横断的にデータを突き合わせる仕組みが求められるため、このようなテンプレートライブラリーを有効活用することで「どのデータをどう可視化すれば成果を正しく分析できるか」という設計の手間を大幅に省くことができます。
また、HubSpotのレポートライブラリーはユーザーが自由にアレンジ可能です。たとえば、デフォルトのレポートを複製して指標を入れ替えたり、表示期間の変更や絞り込みフィルタの追加などで、自社のKPI定義に合ったレポートを追加作成できます。
さらに、レポートで得られたインサイトをダッシュボード上に集約し、役職や部門の違いに応じてアクセス権や閲覧画面を調整することも容易です。
<ダッシュボード画面のイメージ>
こうして全社員が最新データを共有し、必要な場面で迅速に意思決定を行う基盤が整うため、RevOpsの要となる「情報の一元管理と部門横断連携」を強力に後押しします。
マーケティング部門のKPIレポート活用例
それでは実際に、レポートライブラリーでどのようなレポートを活用できるのか、部門別に具体例を紹介していきましょう。まずはマーケティング部門です。以下のようなレポートテンプレートが用意されています。
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リード獲得ソースレポート
マーケティング活動で重要になるのが「どのチャネルからリードが流入しているか」です。HubSpotのレポートライブラリーには、検索エンジンやSNS、広告、メールキャンペーンなど、リードの流入元をグラフ化したレポートがすでに用意されています。これを見れば、流入元別のリード数の推移や質の高いリードが多いチャネルを一目で把握でき、投資の配分を最適化しやすくなります。
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コンテンツパフォーマンスレポート
ブログ記事やホワイトペーパー、Webセミナー録画など、どのコンテンツがどれだけのアクセス数やコンバージョン数を稼いでいるかを可視化します。たとえば「リードをもっとも多く獲得したブログ記事は何か?」「資料ダウンロード率が高いコンテンツの特徴は?」といった分析が可能になり、コンテンツマーケティングの効果測定に役立ちます。
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キャンペーンROIレポート
広告費やイベント出展費など、各キャンペーンに投下したコストとそこから得られたリード数・商談数・受注額などを紐づけてROIを算出するレポートです。マーケティング部門にとっては投資対効果を把握することが極めて重要なので、このレポートを活用すれば投資判断やPDCAの精度が向上します。
こうしたレポートを組み合わせ、マーケティング部門用のダッシュボードを作成しておけば、たとえば週次や月次で「どの施策が成功し、どこが改善を要するか」を明確に議論しやすくなります。また、それらの評価が営業部門や経営陣とも共有されれば、RevOps全体の成果を高めるための協力体制が自然と生まれます。
営業部門のKPIレポートの活用例
営業部門では、受注プロセスを正確に把握してボトルネックを特定し、リードと商談を適切に管理することがKPI達成の鍵となります。HubSpotのレポートライブラリーには、営業KPIの測定に役立つ以下のようなレポートが準備されています。
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商談ステージ別パイプラインレポート
営業担当が抱える商談が「初回アプローチ」「商談中」「見積もり提出」「意思決定中」など、どのステージにどれだけあるかを俯瞰できるレポートです。これにより、営業プロセス上のボトルネックを特定しやすくなり、ステージごとのアクションを適切に調整できます。
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営業担当者別パフォーマンスレポート
各営業担当者が、今月どれだけ商談を進め、受注を獲得したかを可視化します。受注率や平均商談期間、商談あたりの平均受注金額などを横並びで比較すれば、優秀な担当者の成功要因を分析でき、結果が芳しくない担当者をサポートする体制も整えやすくなります。
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商談失注理由レポート
失注してしまった商談の原因を分析するためのレポートで、「価格折り合い不足」「競合製品への乗り換え」「緊急性の欠如」など、失注理由をカテゴリごとに集計します。失注パターンが偏っている場合は、営業トークやオファー内容に修正を加えたり、新たな付加価値を打ち出したりする必要があるかもしれません。
これらのレポートをダッシュボード化し、営業部長やマネージャーが定期的に確認することで、部下の進捗状況や提案内容の妥当性を素早くチェックできます。
また、マーケティング部門が引き渡したリードに対する商談の進捗が悪い場合は、マーケティング施策へフィードバックしてリードクオリティの向上を図るといった横断的PDCAも可能になります。
カスタマーサクセス部門のKPIレポートの活用例
カスタマーサクセス部門では、顧客のロイヤルティを高め、解約率(チャーン)を低減しながら、アップセルやクロスセルを狙うのが主なミッションです。HubSpotのレポートライブラリーからは以下のようなレポートを活用できます。
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解約率・契約更新率レポート
顧客ごとに契約ステータスを追跡し、一定期間ごとの解約率や更新率を可視化します。これにより、どのタイミングで解約が発生しやすいかを把握できるので、顧客オンボーディングやフォロー体制の見直しに直結させることができます。
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顧客満足度(NPS)レポート
顧客アンケートの実施などで、NPS(Net Promoter Score)などの指標を集計し、顧客が自社サービスをどの程度推奨しているかを把握します。NPSが高い顧客層と低い顧客層で分析を分けると、プロダクト活用状況やサポート体制の改善余地を具体的に見つけやすくなります。
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アップセル・クロスセル機会レポート
既存顧客の利用状況や興味関心をもとに、アップセル(上位プランへの切り替え)やクロスセル(追加サービスの導入)につながりそうな機会をリストアップするレポートです。これによって、カスタマーサクセス担当者が顧客満足度向上だけでなく、収益拡大に貢献しやすくなります。
こうしたカスタマーサクセスのレポートを定期的にモニタリングすることで、プロダクトの改善点やサービス提供手順の最適化が迅速に行われるようになり、長期的な関係構築によるLTVの最大化を目指すRevOpsの観点からも大きなメリットが得られます。
KPIレポートの可視化・分析による業務横断的なPDCAサイクルの重要性
上述したマーケティング・営業・カスタマーサクセス部門それぞれのレポートを、HubSpotのレポートライブラリーやダッシュボードで可視化すると、各部門の活動状況とその成果がリアルタイムに把握できるようになります。
また、レポートライブラリーにはない自社固有のレポートを作成したい場合は、カスタムレポート機能で自由にレポートの作成も可能です。
※HubSpotのカスタムレポート作成のナレッジページはこちら
ここで重要なのは、それらのデータを「部門別に見るだけ」で終わらせるのではなく、業務横断的に捉えて「PDCAサイクルを回す」ことです。
たとえば、マーケティングチームが獲得したリードの質が商談化に結びつきにくいのであれば、営業チームの商談状況レポートを踏まえてターゲット要件を再検討し、広告やキャンペーンの調整を行う必要があります。
あるいは、営業チームが一定の受注を得ても、カスタマーサクセスの段階で解約リスクが高まっているとわかった場合は、サービスのオンボーディングプロセスの見直しや、サポートドキュメントの強化などが必要になるでしょう。
このように、部門を超えたリアルタイムなデータ共有と定期的なフィードバックが、RevOpsの本質的な狙いである「収益成長の最大化」を現実のものにします。
HubSpotを活用したレポートライブラリーとダッシュボード設計は、PDCAサイクルを高速化し、より少ないコストで大きな成果を生み出す仕組みづくりを強力にサポートしてくれるでしょう。
まとめ
本記事では、RevOpsの導入を成功させる鍵としてHubSpotが果たす役割と、具体的にどのように「レポートライブラリー」を用いてKPI測定を効率化できるかを紹介しました。
マーケティング、営業、カスタマーサクセスそれぞれのKPI設定例を見てもわかるように、どの部門の成果指標も最終的には企業の収益につながっており、単一部門だけで最適化を図っても成果は限定的です。
RevOpsの真価を発揮させるには、HubSpotのようなCRM一体型の統合プラットフォームでKPIデータを一元管理・可視化し、部門を横断してPDCAサイクルを回す体制を作ることが不可欠です。
HubSpotには標準搭載のレポート機能が豊富に用意されており、テンプレートをうまく活用することで自社固有の業務フローに合わせたKPIモニタリングをスピーディーに立ち上げられます。
とりわけ、レポートライブラリーはバリエーションが豊富で、導入初期から「どの指標をどう見ればいいか」に悩まずに済むのがメリットです。
これらのレポートとダッシュボードを使いこなすことで、マーケティングと営業、営業とカスタマーサクセスというように、部門間の情報共有と意思決定がスムーズになり、結果として業務効率化と収益向上を同時に達成できます。
もし自社でのHubSpot活用やRevOps導入に向けて課題を感じているのであれば、まずはレポートライブラリーを活用して、既存のデータがどのように可視化・分析できるかを試してみると良いでしょう。
データが明確に可視化されれば、具体的にどこを改善すべきかが浮き彫りになり、チーム全体の合意形成もしやすくなります。最終的にはこれが継続的なPDCAの実践へとつながり、BtoB企業が目指す持続的な成長を実現する礎となるでしょう。