BtoBマーケティングや営業の世界で注目される「アノニマスリード」とは何でしょうか。この記事では、アノニマスリードの重要性や活用法について解説します。
これらの情報を活用することで、BtoBマーケティングや営業におけるアノニマスリードの活用法を理解し、新規顧客の獲得やマーケティング戦略・セールス戦略の効果を最大化することが期待できます。
目次
アノニマスリードとは?基本概要とその重要性
アノニマスリードとは?定義と特徴
「アノニマス」とは、英語の「Anonymous」のことで「匿名の」という意味があり、「アノニマスリード」とは、名前や連絡先が特定されていない自社の「Webサイト訪問者」のことを指します。(広義では、自社のサイトにまだ訪れていない、ダークファネルのユーザーも含めて指す場合もありあす)
アノニマスリードは、自社のサイトに訪れているため、ユーザーが自社に何らかの興味・関心を持っている可能性があるものの、まだ具体的なコミュニケーションができていない状態です。(=サイトには訪れているものの未だコンバージョンしていない状態のリードとも言えます。)
身元は明確ではないですが、適切に管理することで顕在顧客へと変換可能な「潜在的価値」を秘めています。
つまりアノニマスリードの特徴は、「匿名」であることと、「潜在的な顧客」であることが挙げられ、多くの企業がアノニマスリードを見落としがちですが、有効な戦略を実施することで、重要なビジネス機会を掴むことができるのです。
アノニマスリードに注目すべき背景と理由
アノニマスリードが多く発生する背景として、インターネット環境やSNSの普及に伴い、日々膨大に増えていく情報ページ(Web/SNSページ)や、デジタルマーケティングの進化に伴い、「購買前のユーザーの行動や情報収集が多様化している点」が挙げられます。
特にBtoB領域では、「約7割の見込み顧客が営業と商談をする前に一通りの情報収集を終えている(商談前に勝負が決まっている)」と言われており、ユーザーの多様化する情報収集の方法に応じて、見込み顧客になる前の段階で適切なアプローチを行うことが必要となることから、アノニマスリードが注目されているのです。
参考記事:顧客獲得の秘密兵器!ダークファネルマーケティング攻略法
アノニマスリードの重要性:ビジネスにおける役割
アノニマスリードを有効活用することで、ビジネス上期待できる主な効果は以下が挙げられます。
- 新規顧客の獲得効率の向上
従来の手当たり次第によるアウトバウンド型のリード発掘から商談化して新規顧客を獲得するよりも、自社のサイトに一度でも訪れているため、新規顧客獲得までの敷居が低くなる - マーケティング活動の効率化やROIの改善
これまで手当たり次第に実施していたオンライン広告(一方的なキーワード検索広告やターゲッティング広告など)等を見直し、アノニマスリードだけに狙いを定めた広告を運用することで、クリック数やコンバージョン数の改善が見込め、ROIが改善する。 - 営業活動の顧客エンゲージメントの向上
アノニマスリードに対してパーソナライズされた情報を積極的に提供することで、これまで以上に顧客エンゲージメントが向上できる可能性があります。 - 自社の製品やサービスに興味のある層へのコンテンツ開発の改善
アノニマスリードからコンバージョン、顧客獲得するまでの一連のデータ(訪問ページや滞在時間、クリック箇所など)を深く分析することで、積極的に力を入れるべきコンテンツが可視化され、コンテンツ開発の優先度や有効なコンテンツ内容の検討や開発が改善されます。
このように、アノニマスリードへの積極的な取り組みは、企業の成長を支援する重要な要素となり、アノニマスリードを上手く活用することで、マーケティング施策や営業施策、コンテンツ開発の質があがり、効率的な顧客獲得を行うことができるようになります。
アノニマスリード情報:何が収集できる?
アノニマスリードの情報として収集できるものは何が挙げられるでしょうか?
取得できるデータの一覧:アクセス行動から学ぶ
アノニマスリードの情報として、ユーザーがCookie情報を許可している場合は、以下のようなデータを取得することができます。
- Webサイトへのアクセスページや閲覧時間、閲覧回数
- ページ内のクリック箇所や回数
- 利用ブラウザやデバイス端末、地域
- ユーザーのIPアドレス(ABMツールと連携することで「具体的な企業名」の取得)
これらのデータの詳細を分析することで、アノニマスリードの関心事やニーズの詳細、訪れている企業名や業種・業界を把握できます。さらにはデータを基にしたセグメント分析や、購買プロセスの把握が可能になり、自社にとってより適切なターゲティングが実現し、効率的なマーケティングや営業活動を展開できます。
アノニマスリードへのBtoBマーケティング戦略
アノニマスリードに対するBtoBマーケティングでは、以下のような具体的な戦略が有効です。
1. インバウンドマーケティングの強化
「インバウンドマーケティング」とは、ユーザーにとって価値のあるコンテンツ情報を継続的に発信することで、アノニマスリードを惹きつけます。
具体的には、ブログ記事の定期投稿、ホワイトペーパーの提供、メルマガの発信、ウェビナーの開催などが挙げられます。
これらのコンテンツを通じて、アノニマスリードの課題や関心事項に応えながら、企業に対する信頼(=エンゲージメント)を高めることができます。
アノニマスリードは自分の知りたい情報、自社にとって有用な情報を求めているため、それらのニーズを満たすことで、より多くのアノニマスリードを獲得し、リード育成の入り口に立たせることが可能になります。
優れたコンテンツは、アノニマスリードに対する最初の接点となり、ブランド認知やリード獲得に大きな役割を果たしますので、コンテンツの質も問われるでしょう。
さらに、資料ダウンロードやセミナー・イベント参加時に、メールアドレスや企業名などの情報を入力させるフォームを設けて、アノニマスリードの情報を具体的な個人情報と紐付ける(リードナーチャリング)ことがより重要です。
2. ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)の実施
ABMでは、自社が狙うべきターゲットアカウントを事前に設定し、集中的にマーケティング施策を打ち出します。訪問履歴の高いアカウント(企業)や優良見込み客を特定し、重点的にアプローチすることで、アノニマスリードの顕在化を加速できます。
具体的には、ターゲットアカウント毎にカスタマイズされたコンテンツ(業種や業界に特化した情報)を表示したり、パーソナライズされたメルマガを送付したり、企業名を指定したターゲティング広告を出稿したりと、様々な施策が考えれます。ターゲットアカウントに対する自社の認知度をより高め、製品やサービスに対する興味や関心を喚起していくことがポイントです。
BtoBにおけるアノニマスリードは、いわば企業の中の特定の個人が閲覧している状態なので、企業単位でのアプローチが最も有効です。確度の高い企業に集中的に働きかけることで、より多くのアノニマスリードを顕在化させ、リード獲得につなげられる可能性が高まります。
3. ターゲティング広告の活用
ターゲティング広告は、特定のユーザー層に適切な広告を配信し、購買意欲を高める手法です。
自社のサイトに過去に訪れた方をオーディエンス対象にしたリターゲティング広告や、企業名をターゲットとしたDSP広告やSNS広告などが挙げられます。これらの広告は、ユーザーの興味や検索履歴、訪問履歴に基づいて広告が表示されるため、効果が高いとされています。
効果的な運用方法として、まず、ターゲットとなるユーザー層を特定し、彼らの興味やニーズに応じた広告クリエイティブを作成することが重要です。
次に、配信する広告のタイミングや頻度を調整し、顧客への訴求力を最大化します。
そして、A/Bテストなども通じて運用の結果を定期的に分析し、改善策を実施する(PDCAを回す)ことで、効果的なターゲティング広告が実現されます。
アノニマスリードへのBtoBセールス戦略
BtoCとは異なり比較的高額な製品やサービスを扱うBtoBでは、長いセールスサイクルが一般的で、製品やサービスへの問い合わせから顧客獲得までに時間がかかります。そのため、長い期間をかけてアノニマスリードを適切に育成し、顧客へと転換させていく必要があります。
ここからは、具体的なセールス戦略について解説します。
1. 営業リストの作成
営業リストの作成は、見込み客に効果的にアプローチするための重要なステップです。アノニマスリード獲得の手法で得られたデータや、登録された顧客情報を元に、リストを作成することで、営業チームはターゲットとする顧客に対して適切なアプローチを行うことができます。
営業リスト作成のポイントは以下の通りです。
- ウェブサイト訪問履歴の活用による企業名の抽出
ウェブサイトの訪問回数が多い企業や、重要なコンテンツページを閲覧している企業を抽出します。これらはリード化の可能性が高い企業です。 - コンテンツ消費状況の分析によるニーズや課題の抽出
どのコンテンツ(ホワイトペーパーやブログ記事)を読んでいるのかを分析し、関心の高い領域や課題を把握します。そうした観点から企業を切り分けます。 - ABMアカウントとの紐付けによる優先度の検討
ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)でターゲットとしているアカウントをリスト内では優先度を高く設定します。ABMツールの活用でIPアドレスから企業名を特定し、過去に取引や訪問履歴があった場合は積極的にアプローチします。 - フィルタリングと優先順位付け
上記の観点から、定期的にリストを更新し、優先すべきアカウントとそうでないアカウントの切り分けが重要であり、営業リソースの効率的な活用を目指します。
このように、ウェブサイト訪問データやコンテンツ消費状況、ABMアカウントなどのデータを組み合わせ、定期的にリストを最適化していくことが重要です。
営業リソースには限りがあるため、優先順位を明確にし、生産性を高めることがポイントとなります。
2. トライアルやデモ、ウェビナーの活用
BtoBにおけるトライアル利用やデモの活用は、アノニマスリードを顕在化させる上で非常に効果的な手段です。
具体的には以下のようなアプローチが考えられます。
- フリートライアル提供
訪問履歴の高いアノニマスリードにメール等で案内を送付し、製品やサービスの一部を無料で利用できるフリートライアルを提供します。フリートライアル中の利用動向を分析し、製品に興味がある兆候を確認します。 - デモの個別提案
アノニマスリードの業種や規模、課題などを想定し、デモ動画を作成し、訪問履歴の高いアノニマスリードにデモ動画へのリンクを直接メール送付します。 視聴したユーザーに追加の質問や個別説明のオファーを行います。 - ライブデモウェビナー
製品やサービスのライブデモを交えたウェビナーや個別ミーティングを開催します。訪問履歴の高いアノニマスリードにウェビナー参加や個別ミーティングのアポを呼びかけ、ウェビナー中のチャット質問や視聴行動、個別ミーティング中の各種質問内容から、熱心なリードを特定します。
このように、無料トライアルの提供やデモの実施を通じて製品やサービスへの関心をより高め、アノニマスリードをより顕在的なリードに転換させることができます。
百聞は一見にしかずと言われますが、実際に体感や体験してもらうことで製品やサービスへの理解が進み、セールス機会の創出にもつながります。デモの方式を組み合わせて、段階的にリードを育成していくアプローチが有効でしょう。
まとめ:アノニマスリード活用でビジネスを加速
アノニマスリードをマーケティングや営業に有効活用することは、ビジネス成長を促進する重要な手段です。
アノニマスリード活用をマスターすることで、ビジネスはより多くの顧客と結びつき、成功への道がより明確になるでしょう。この機会に、アノニマスリードの活用を検討し、次のステップに進んでみましょう。